2025年のノーベル化学賞に、日本人研究者2名が同時受賞するという歴史的ニュースが世界を駆け巡りました。
受賞したのは京都大学出身の北川進さん(75)と坂口志文さん(74)の二人。
“”同大学の同年代”という縁も話題を呼んでいます。
二人の研究はそれぞれ「多孔性配位高分子(MOF)」と「免疫チェックポイント分子PD-1」に関するもので、いずれも人類の生活・健康を大きく変える発見として評価されました。
本記事では、この快挙のすごさと背景、そして世界に及ぼす影響を追っていくこととします。
“日本人2名がノーベル賞受賞”がすごい!

北川・坂口(50音順)両氏がダブルで”ノーベル賞受賞”と久々に日本に明るいニュースが飛び込んできました。
世界的権威のある「ノーベル賞受賞」とはどれほど凄いことなのか詳しく見ていきましょう。
ノーベル賞における日本人の受賞はこれまで計29人(自然科学分野)です。
しかし、同一年に2名が選ばれるのは極めて珍しいことでしょう。
しかも今回は、同じ京都大学出身、同世代という偶然が重なり、「日本の研究力が改めて世界に証明された」と話題を集めています。
このダブル受賞は、基礎科学を重んじてきた日本の教育・研究文化の成果であり、国際的にも象徴的な出来事です。
”坂口氏と北川氏にノーベル賞、同年ダブル受賞の快挙に沸く 地道な努力重ねた2人は基礎研究への支援訴え”
2025年のノーベル生理学・医学賞に大阪大学特任教授の坂口志文氏が、化学賞に京都大学特別教授の北川進氏が、それぞれ共同研究者とともに選ばれた。坂口氏は「免疫応答を抑制する仕組みの発見」が、自己免疫疾患やがんなど免疫が関わる病気の予防や治療につながると評価された。
他のメディアによると両氏は京大時代に面識があり、当時の仲間からは「モットーは“無用の用”と“素心”だった」と証言されています。
派手さよりも純粋な探求心を重んじた二人の姿勢が、数十年を経てノーベル賞という形で報われたのだと思います。
北川進さんと坂口志文さんの姿勢に共通するのは、「無用の用」という考え方です。
研究には大きく、実用的なものといつ必要なときが来るかわからないがひたすらこだわりを追究するものがあります。
後者が「無用の用」です。
日本は特にここ、10数年、基礎研究費が削られてきており、大学側が悲鳴を上げていました。
時の政権によって大学の研究費、特に基礎研究に対する教育費が削減された経緯があり、とても残念に思ってきました。
しかし、そのような苦境の中にありながらも、ひたすら基礎研究を続けた方もあったのです。
北川進氏と坂口志文氏の自由な研究を支えた京都大学にはScience Portalというサイトがあります。
これまでノーベル賞受賞者を輩出した京大には自由に学問・研究の風土があります。
そんな京都大学ですが、やはり基礎研究力が低下していることが懸念されてきました。
不遇な時代も地道に努力を積み重ねて栄誉に輝いた2人は、そろって基礎科学や基礎研究への支援を訴えた。背景には最近の日本の研究力低下がある。明るいニュースは、同時に自由で進取な気風に富んだ研究環境の大切さと、そうした環境の確保・整備が今後の課題であることも浮き彫りにした。
このノーベル賞受賞をきっかけに、「無用の用」を尊重し、自由に学問ができるための予算配分がなされることを望みます。
北川氏と坂口氏の明るいニュースが今後内外にどのような影響を及ぼすか注視していきたいと思います。
研究の背景

今回の受賞の裏には、数十年にわたる地道な研究と、日本の大学研究の伝統があります。
北川進氏と坂口志文氏の地道な研究の根底になるものはなんなのでしょうか。
北川進(きたがわすすむ)氏は材料化学、坂口志文(さかぐちしもん)氏は免疫学でまったく異なる分野でありながら、「基礎科学を徹底的に掘り下げた」点で共通しています。
まずは、北川進氏の研究の背景について調べていきます。
北川進氏のMOF研究は、1980年代後半から始まり、分子レベルで“空間”をデザインする発想が評価されました。
2025年のノーベル化学賞に、微小な穴を無数に持つ新たな多孔性材料「金属有機構造体(MOF=モフ)」を開発した北川進・京都大特別教授(74)が選ばれました。2014年のインタビューを掲載します。金属有機構造体は、記事中で「多孔性金属錯体」と記述されています。(初出は2014年10月27日東京新聞朝刊。年齢などは当時)
引用:東京新聞
NHKニュース(2025年10月9日)では、「北川進氏は”気体を吸着する多孔性金属錯体”を開発し、環境・エネルギー問題の解決に道を開いた」と報じています。
続いて、坂口志文氏の研究について見ていきましょう。

坂口志文氏の研究の背景とはどのようなものなのでしょうか。
情報によると、彼は1992年、京都大学ウイルス研究所で”PD-1分子”を発見されたそうです。
その後、癌の免疫治療薬「オプシーボ」を開発の基礎を築かれました。
”原点は「愛知県がんセンター」”
坂口さんの研究の“原点”となったのは――
「大学を卒業して博士課程に入ったが、自分が本当に何の研究をしたいかということで、いろんなことを勉強していたときに、愛知県がんセンターで、非常に面白い研究をされていると、思い切って大学院を辞めて、愛知県がんセンターで勉強をさせてもらった。
引用:メ~テレニュース
坂口氏は。NHKニュースインタビューで「最初は何の役に立つか分からなかったが、真理を知りたい一心だった」と語っています。
両者の研究は、すぐに実用化されなかったかもしれませんが、時が経ってそれがいつしか「役に立つ」、その時がきたのです。
「基礎研究」の大切さが世間に広まっていくことを希望して止みません。
また、基礎研究に対する国の予算措置も期待したいところです。
世界に及ぼす影響に迫る!

上の写真は左が大阪大学、右が京都大学からの提供です。
北川進氏、坂口志文氏(50音順)のノーベル賞、同年ダブル受賞の快挙に沸く 日本ですが、今後両氏の研究成果は国内外においてどのような展開を見せるのでしょうか。
北川氏は1997年、金属イオンと有機分子を混ぜると分子同士がひとりでに結び付く「自己組織化」という現象を用いてMOF(金属有機構造体:モフ)を作り、特定の気体分子などを取り込む性質があることを示しました。
この性質を利用して二酸化炭素(CO2)を分離したり、水中から有機フッ素化合物(PFAS)などの有害物質を除去する研究が進むそうです。
特に水道水に含まれることが懸念されるPEFAS=(ピーファス)の除去はたいへんにありがたいことです。
地球温暖化をはじめとした環境分野の課題解決の切り札になり得る新材料として期待が高まっています。
このように、今回のノーベル賞受賞は、日本国内だけでなく、世界中の科学界・産業界にも波紋を広げていくことでしょう。
北川氏の研究は環境問題、坂口氏の研究は医療分野において、人類の未来を変えるポテンシャルを秘めているとも言えます。
既に、北川氏のMOFは、二酸化炭素の回収や水素エネルギーの貯蔵に応用が進む2024年Science誌で取り上げられたようです。
一方、坂口氏のPD-1理論は、世界のがん治療薬開発に革命をもたらし、すでに数十万人の命を救っていると2020年、”Nature Medicine” で紹介されています。
各国メディアも両研究をもとに新たなベンチャー企業・国際プロジェクトが立ち上がっており、グローバル経済にも影響を与えていると伝えています。
これらは、両者とも”基礎研究”から応用へとつながる成果であり、「研究者が長年地道に続けた探究心の結晶」と海外メディアも報じています。
また、日本経済新聞によりますと、京都府ではノーベル賞の坂口志文氏と北川進氏に特別栄誉賞を授与するということです。
”京都府、ノーベル賞の坂口志文氏と北川進氏に特別栄誉賞”
京都府は17日、2025年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文・京都大名誉教授と、化学賞が贈られる北川進・京大特別教授に府特別栄誉賞を授与すると発表した。
引用:日本経済新聞
純粋な研究心・探求心で地道に自分の道を究めているお二人の笑顔は「子ども」のように屈託がありません。
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下の動画は前半が坂口進氏、次に北川進氏の情報が出てきます。
日本中がノーベル賞、それもダブル受賞に湧いています。
日本の底力を再認識した思いがします。
まとめ
今回のノーベル賞受賞は、長年にわたる地道な研究の積み重ねが実を結んだ結果であり、北川進氏と坂口志文氏のダブル受賞という「凄さ」について見てきしたが、いかがでしたか。
北川進さんと坂口志文さんの姿勢に共通するのは、「無用の用」という考え方だということも分かりました。
今すぐ役立つわけではなくとも、未知を追い求める探究心こそが未来を切り開く力になるという信念です。
基礎研究費が削減され、決して潤沢な研究費が保障された環境にはありませんでしたが、ひたすら学問・研究に打ち込んだ結果は私たちに多くの示唆を与えてくれたと思います。
彼らの研究は数十年後の医療やエネルギー、環境分野にも波及し、世界をより良く変える礎となるでしょう。
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